BC-1010BJ
BC-1010BJ基本解説 |
Toshiba
ゲーム機能を搭載した電卓――通称「ゲーム電卓」の最初期に米国で発売された機種のひとつ。『BC-1010BJ』の末尾の『BJ』はカードゲームのブラックジャックの頭文字を取ったものだと思われ、その名のとおりブラックジャックが遊べる電卓となっている。なお、日本の電機メーカーである東芝の製品だが、日本向けバージョンの存在は確認されていない。
はじめにベットボタンで賭け金を入力すると、ディスプレイの左端にディーラーの数字がひとつ、右端にプレイヤーの数字がふたつ表示され、ブラックジャックの勝負が開始される。最終的な数字の合計が21以内でディーラーを上回れば勝利という基本ルールに加えて、インシュランス(※1)やスプリット(※2)、ダブルダウン(※3)といった特殊ルールも実行可能。また、52枚のカードを順番に使っていく仕様のため、カードの残り枚数が減ってくると数字を予測しやすくなることへの対策として、38枚を使った時点で自動的にシャッフルするというシステムも導入されている。
※1:インシュランス……ディーラーの最初の数字がAの場合に賭け金の半額を保険として払うと、ディーラーにブラックジャックが成立したときに収支をゼロにできる
※2:スプリット……プレイヤーの最初のふたつの数字が同じ場合に、同額の賭け金を追加して2組に分けて勝負できる
※3:ダブルダウン……賭け金を2倍にできるかわりにカードを1枚しか引けなくなる
ブラックジャックモードでのボタンの役割は、各ボタンの上部に記されている。右端の列は上から順にインシュランス、スプリット、ダブルダウン、ステイで、その左がヒット。左端の列は一番上がベット、その下がトータルの所持額の表示ボタン。
賭け金をベットすると、12個並んだ0の数字が点滅する。この演出は、カードをシャッフルしていることを示す。
左端の「F」がディーラー(コンピュータ)、右端の「F4」がプレイヤーの数字。「F」は絵札を意味し、この時点でのプレイヤーの数字の合計は10+4=14。
ヒットボタンでカードを1枚追加すると「7」の数字が! 7+10+4=21となり、これ以上カードを引く必要はないので、ステイボタンを押す。
プレイヤー側に合計の「21」の数字が表示され、直後にディーラーが2枚目のカードを引くと「F」。ディーラーの数字の合計は10+10=20となった。ディーラーは17以上のときにカードを追加で引けないルールなので、これで勝負することに。
ディーラー側に合計の「20」の数字が表示され、プレイヤーの勝利が確定。賭け金と同額だけプレイヤーの所持金が増える。
ちなみに、スプリットでの勝負を終えたあとは、プレイヤー側に2組分のカードの合計が並んで表示される。この例だとディーラーはバーストしているので、プレイヤーの1勝1敗だ。
本体を収納できるビニールカバーが付属している。写真の右上は保証書で、右下は取扱説明書。余談だが、『BC-1010BJ』のパッケージには、ブラック以外にブルーのバージョンも存在する。
内部の基板に組み込まれているCPUは、NEC製の「D1021C」。『BC-1010BJ』は、東芝とNECが協力して開発した製品と言える。
『BC-1010BJ』を紹介するうえで迷ったのが、発売年をいつにするかということだった。なぜなら、パッケージ、本体、取扱説明書には年度表記が一切ないうえ、この機種に関する当時の資料類も見当たらない。『BC-1010BJ』を扱っている国内外のWebサイトを調べてみても、発売年の表記に1976年と1977年の2種類があり、どちらの年が正しいのか判断できない。最後の手段として発売元の東芝に問い合わせてみたが、「過年度品のため、残念ながら資料および対応できる部門がございません」という回答しか得られなかった。
当ミュージアムが注目したのは、保証書の隅に小さく書かれている「RA 0-76-0」という表記。この「76」は「1976」の下2ケタなのではないかといった推測のもと、ひとまず発売年を「1976年?」と変則的な形で記載しておいた。1976年発売で正しいのであれば、この『BC-1010BJ』か、ユニソニック社から同じ年にリリースされた『カジノ7』のどちらかが世界初のゲーム電卓ということになる。これら最初期のゲーム電卓についての情報をお持ちの方がいたら、ぜひContactからご一報ください。
保証書の左下隅に記された「RA 0-76-0」の「76」は、「1976年」を意味するように思われるが、はたして……?