スピーク&スペル

Speak&Spell
  • 【発売元】
    テキサス・インスツルメンツ(米国)
    Texas Instruments
  • 【発売日】
    1978年
  • 【価格】
    50ドル
  • 【カートリッジ】
    10種類

 6~14歳の子どもに英単語の発音と綴りをマスターさせることを目的に、米国のテキサス・インスツルメンツ社が開発した電子玩具。それまでにも教育的な要素を持つ電卓タイプの商品は存在していたが、『スピーク&スペル』が画期的だったのは「しゃべる」点にある。基本となるモードは、スピーカーから英単語が発音され、そのスペルを正しく入力できれば正解になるというもの。問題を音声で出題するのに加えて、「You are right!(正解!)」「Wrong, try again!(間違い。もう1回!)」などの判定まで声で聞かせてくれるのは、当時としては非常に大きなインパクトがあった。世界初の1チップ音声合成ICを開発し、電子玩具での“SPEAK”を実現させたテキサス・インスツルメンツ社の技術力は高く評価され、この商品はすぐにヨーロッパ諸国および日本などでも販売されるようになる。


 そして、『スピーク&スペル』のもうひとつのセールスポイントが、ワードモジュールという名の別売りカートリッジによって収録単語が増えていく拡張性だった。対象学年別に単語をグループ分けしたワードモジュールは、米国内で全10種類が発売されている(詳細は「カートリッジ」のページを参照)。


 言うまでもなく、『スピーク&スペル』は純粋なゲーム機ではない。しかし、相手の考えている英単語を一文字ずつ当てていく伝統的なゲーム『ハングマン』風のモードが実装されているほか、パッケージには「game」という単語が何度も使われている。また、別売りのカートリッジを利用できる仕組みは、前年に発売された同社のプログラム電卓『TI-59』『TI-58』に導入されていたとはいえ、それまでの携帯型電子玩具には見られないものだった。以上を踏まえると、『スピーク&スペル』はカートリッジ交換式携帯ゲーム機の先駆け的存在と考えることもできるだろう。

子どもが持ち運びやすいように、本体上部を取っ手にしたデザインは秀逸。

スピーカーから流れ出るロボット風のボイスは、アナウンサーの声を素材にして音声合成チップが作り出したもの。表示部にはVFD(蛍光表示管)によりアルファベットがくっきりと映し出される。

最上段のボタンで4種類のモードのいずれかを選ぶ。「MYSTERY WORD」というのが、『ハングマン』風の単語当てゲームを楽しめるモード。

ワードモジュールは、電池ボックスの上側に差し込む。電池を入れる前にワードモジュールをセットしておく必要がある。

シンプルな説明書(左)とともに、イラスト満載のガイドブック「FUN WITH WORDS!」(右)を同梱。

左側が初回版である1978年版、右側が1980年版の本体。1978年版のみ各ボタンが出っ張っており、1980年版以降は平面型キーボードが採用された。

『スピーク&スペル』をはじめとする『スピーク&』シリーズのボイスを集めたCDも登場。また、ドイツの電子音楽グループ「クラフトワーク」のように、『スピーク&スペル』のボイスを楽曲に組み込むアーティストも現れた。

【CGWM TRIVIA】
『スピーク&スペル』と『E.T.』のつながり

 『スピーク&スペル』を語るうえで切り離せないのが、映画との関係だろう。『E.T.』(1982年公開)において、地球外生命体のE.T.は『スピーク&スペル』で言葉を覚えたり故郷の星との交信機を作ったりする。また、『トイストーリー』(1995年公開)では、アンディ少年が持っているおもちゃのひとつとして、『スピーク&スペル』をモデルにした「ミスタースペル」という名のキャラクターが登場。これらの作中でのフィーチャーのされかたを見ていると、『スピーク&スペル』が米国民にとってポピュラーな商品であることが伝わってくる。

 テキサス・インスツルメンツ社は『E.T.』とのつながりを積極的にプロモーションに利用し、映画の公開直後には『スピーク&スペル』のパッケージに『E.T.』のロゴシールを貼って商品展開を開始した。また、別売りのカートリッジ全10タイトルの最後を飾る1本として、『E.T.ファンタジーモジュール』という企画物もリリース。さらに2022年にはベーシック・ファン社から、『E.T.』公開40周年を記念して特別なデザインの『スピーク&スペル』が発売された。

 以上は『スピーク&スペル』の本体およびカートリッジに関連したものだが、その枠にとどまらず、『スピーク&スペル』と『E.T.』を結ぶ商品はほかにも存在する。以下に、代表的な2点を紹介しよう。

カナダのグランドトイズ社が発売した、身長約9cmのE.T.アクションフィギュア。約2.7cm×1.8cmの『スピーク&スペル』のミニチュアも同梱されている。そのミニチュアをE.T.フィギュアの指先に引っかけて持たせることが可能。

テキサス・インスツルメンツ社自身の商品である『E.T.カリキュレーター』。この電卓のデザインだと、『スピーク&スペル カリキュレーター』という名称のほうがふさわしいような……なんてツッコミを入れるのは無粋?

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