マセマジシャン

Mathemagician
基本解説
  • 【発売元】
    APFエレクトロニクス(米国)
    APF Electronics
  • 【発売日】
    1977年

 ゲーム機能を搭載した電卓――通称「ゲーム電卓」の最初期に米国で発売された機種のひとつ。1977~1978年に登場した他のゲーム電卓が“ブラックジャックを遊べる電卓”だったのに対して、『マセマジシャン』は電卓に計算学習機とゲーム機というふたつの顔を持たせている。

 基本となるモードは、表示される足し算や掛け算などの計算式の答えを入力するというもので、これは1976年に発売された計算学習機『リトルプロフェッサー』の内容に近い。ただし、2ケタの虫食い算ができたり、2人プレイモードや時間制限モードが用意されていたりと、『リトルプロフェッサー』にはなかった要素がいくつか追加されている。

 さらに『マセマジシャン』の最大の特徴と言えるのが、付属の6枚のオーバーレイを使って遊ぶ6種類のゲームモード。いまとなってはゲームと呼べるのか微妙なものも含まれているが、数字を使った遊びをたくさん詰め込もうという開発者の意気込みは伝わってくる。なかでも、アタリ社がアーケードゲームとしてリリースする前に『ルナランダー』が遊べたことは注目に値するだろう。

 ちなみに、『マセマジシャン』の本体の裏側や説明書などには「JAPAN」の文字が刻まれている。発売元のAPFエレクトロニクス社は、もともと日本から米国へステレオを輸入するために設立された米国籍の会社で、やがて電卓や据え置きゲーム機『TV Fun』シリーズなどの取り扱いも開始したという社歴を持つ。日本では発売されなかったと思われる『マセマジシャン』だが、その開発・製造に日本のメーカーがどのように関わっていたのか、気になるところだ。

入力部には20個のボタンを装備。「?」は解答を入力したあとに押すボタンで、「r」は割り算の余りを入力するときに使うボタン。

電源を入れた直後はこのように表示されるが、数字が欠けているわけではない。電卓用の表示パーツを使って「go」という単語を表現している。

虫食い算の出題画面。式の途中に「2」の下部の横棒が欠けたような文字がふたつあるが、これらは「?」を表し、そこに入る数字を当てなさいという意味。

本体サイズはおおよそ縦22センチ×横13.5センチと、電卓としては大きめ。上部には可動式の取っ手が付いている。

取っ手を背面に立てれば、本体に角度をつけた状態で使用することも可能。

6種類のゲームモードを強調すべく、外箱(左)にも説明書(右)にも「6 EXCITING GAMES!」と目立つように記載されている。

6枚のオーバーレイが付属。それぞれのゲーム内容については、後述の【CGWM TRIVIA】を参照。

本体の裏側に貼られたシール。右下には「JAPAN」の文字が。

本体収納用の発泡スチロールにも「JAPAN」と刻まれている。

『マセマジシャン』の着想のベースになったと思われる計算学習機『リトルプロフェッサー』。米国の大手百貨店シアーズの1977年クリスマスカタログには『リトルプロフェッサー』と『マセマジシャン』が並んで掲載されていた。

【CGWM TRIVIA】
6種類のゲームはどんな内容?

 『マセマジシャン』で遊べる6種類のゲームを、オーバーレイの写真とともに紹介する。大半はあっさりした内容の数字遊びだが、電卓のディスプレイ内で計算以外のことができるというのは、当時は画期的に感じられたに違いない。

【1】ナンバーマシン
ナンバーの枠に数字が約1秒間表示されるので、それを覚えて同じ数字を入力すればOKという単純な内容。幼児向けの遊び。

【2】カウンティン・オン
最初に数字を入力すると、その数字がカウントの枠に何回か表示される。もとの数字に表示回数を掛けた数字を回答できれば正解。

【3】ウォーク・ザ・プランク
1ケタの数字当てゲーム。数字を入力すると正解より大きいか小さいかが表示されるので、それをヒントに3回以内に当てる。ミスするたびに板の上を1歩ずつ進み、3歩進むと落下するという演出を右下のウィンドウで表現。

【4】ファインド・ザ・
   グーイー・ガムドロップ
目標は、ガムドロップが落ちている座標をなるべく少ない手数で当てること。2ケタの数字の十の位が南北の座標、一の位が東西の座標を表す。2ケタの数字を入力するたびに、東西南北のどの方向にズレているかが表示される。

【5】フットボール
写真の左から順に、ゴールまでのヤード数、ダウン数、ファーストダウンまでの残りヤード数。四則演算の問題に正解するたびに前進できるので、実際のアメリカンフットボールと同様に攻撃権を維持しながら、50ヤード先のゴールラインへのタッチダウンを目指す。

【6】ルナランダー
アタリ社の同名アーケードゲームのもとになったテキスト版ゲームと同等の内容。燃料、速度、高度の数字を参照しつつ、宇宙船を安全に着陸させることに挑む。1~9の数字を入力するとその数だけ燃料が消費され、燃料の消費量に応じて速度と高度が変化する。

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