ハンドヘルド・エレクトロニクス・シリーズ

Handheld Electronics Series
基本解説
シリーズ商品
  • 【発売元】
    バンダイ・アメリカ
    Bandai America
  • 【発売日】
    1979年~1980年

 バンダイが日本国内で1979年4月に発売した小型の電子ゲーム機群はミニエルピット・シリーズと名付けられていたが、バンダイ・アメリカはそれを「ハンドヘルド・エレクトロニクス(※1)」というブランド名に変更して北米で展開させた。日本のミニエルピット・シリーズが『ベースボール』『サッカー』『ボーリング』の3機種だったのに対して、北米版は『ベースボール』以外のラインナップを一新(具体的な機種のラインナップは「シリーズ商品」のページを参照)。しかしながら「順番に点滅していく6つのLEDが止まるのを見て、自分でスコアのダイヤルを回す」というシンプルすぎるゲーム内容は変わらなかったため、最初からキッズ向けの商品として位置付けられていた。

 1980年には、マーベルコミックの人気キャラクターを題材にしつつLEDの数を8つに増やした『インクレディブル・ハルク・エスケープス』『アメイジング・スパイダーマン・レスキュー』がシリーズの新作として登場。一方、『サッカー(Soccer)』『モト・スクランブラー(Moto-Scrambler)』『ホットローラーズ(Hot Rollers)』は、同じ年の商品カタログに本体写真まで掲載されていたものの未発売に終わった(『サッカー』は日本のミニエルピット・シリーズの機種とはデザインが異なる)。いかにキッズ向けとはいえ、電子ゲーム機の内容が進化を続けている1980年において、このシンプルすぎるシリーズで勝負を挑むのは難しいとバンダイ・アメリカが判断したということなのだろう。

 なお、当ミュージアムでは、日本発のゲーム機の海外版については基本的にフォローしていないが、ハンドヘルド・エレクトロニクス・シリーズはミニエルピット・シリーズからラインナップが大きく変更されているため、他の機種と同列に扱っている。

※1:ハンドヘルド・エレクトロニクス……全7機種のパッケージに「BANDAI HANDHELD ELECTRONICS」と書かれていることから「HANDHELD ELECTRONICS」の部分をシリーズ名として記載している。ただし、1980年のバンダイ米国商品カタログには「HANDHELD ELECTRONIC GAMES(ハンドヘルド・エレクトロニック・ゲームズ)」と書かれており、日本国内でのエルピット・シリーズLSIポータブルゲーム・シリーズほど明確なシリーズ名は存在しなかった可能性が高い。

プレイボタンを押している間はピピピピ……という効果音とともにLEDが順番に点滅していき、ボタンから指を離すとLEDの光がいずれかの場所で止まる。

止まった場所に書かれた結果に応じて、プレイヤーが自分でダイヤルを回す。これがシリーズ共通の遊びかただ。

ハンドヘルド・エレクトロニクス・シリーズの小型の5機種のパッケージは、透明のプラスチック越しに本体が見える構造。

パッケージから本体を取り出したあとは、ご覧のような状態に。

パッケージの隅には「For KIDS 6 and UP(6歳以上の子ども向け)」と対象年齢が書かれている。日本のミニエルピット・シリーズにはなかった表記だ。

左がミニエルピット・シリーズ、右がハンドヘルド・エレクトロニクス・シリーズの『ベースボール』のパッケージ。表面積に2倍くらいの差がある。

つづいて『ベースボール』の本体を比較。ミニエルピット・シリーズの本体(左)と比べると、ハンドヘルド・エレクトロニクス・シリーズの本体(右)は、「ホームラン」などが英語表記になり、ボディカラーも変更されている。

ハンドヘルド・エレクトロニクス・シリーズは、カナダでも発売された。カナダ版のパッケージは、ふたつの公用語である英語とフランス語が並記されているのが特徴。ただし、余白が足りないためか、「HANDHELD」の単語はカットされてしまった。

こちらは米国版のパッケージ。カナダ版と比べると、文字が少ない分すっきりしている。

【CGWM TRIVIA①】
パッケージには2種類のタイプがある

 ハンドヘルド・エレクトロニクス・シリーズの小型の機種には、2種類のパッケージが存在する。ひとつはマテル社の初期のLEDゲーム機と同様にフラップ(袖のような部分)が付いているタイプで、もうひとつは完全なボックス型のタイプ。さらに『ベースボール』に関しては、2種類のパッケージそれぞれで本体も別物になっている(詳細は『ベースボール』のページを参照)。

正面から見ると、どちらのパッケージも同じに見えるが……。

下側のパッケージは完全なボックス型なのに対して、上側のパッケージはボックスが小さく、正面のサイズを確保するためのフラップが付いている。

【CGWM TRIVIA②】
一部の機種はシアーズ社からも発売された

 北米において約30種類の電子ゲーム機をリリースしたシアーズ社は、1900年代に米国やカナダなどで百貨店を運営していた流通会社。他社製品を自社ブランドに作りかえたプライベートブランドの商品を幅広く取りそろえており、シアーズの名を冠した電子ゲーム機もその一種だった。シアーズから発売された『フットボール』などの数機種は、ハンドヘルド・エレクトロニクス・シリーズの同名ゲーム機のブランド変更版にほかならない。

シアーズ版のハンドヘルド・エレクトロニクス・シリーズのパッケージは2種類ある。そのうちのひとつは、バンダイ・アメリカ版のパッケージに調整を加えたもの。

ひとつ前の写真を拡大。バンダイ・アメリカの社名がシアーズに変わっているほか、シリーズ名が「ジュニア・エレクトロニクス」に変更されている。

一方、こちらはシアーズのオリジナルパッケージ。本体の写真の横に、メカニカルなキャラクターが描かれている。シリーズ内でシアーズ版オリジナルパッケージの存在が確認されているのは、『ベースボール』『バスケットボール』『フットボール』の3機種。

シアーズ版とバンダイ・アメリカ版の本体の違いは、社名が書かれたシールの部分。

シールは変更されていても、シアーズ版の本体裏のプラスチックにはバンダイのマークがしっかりと残っている。

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