トータルコントロール4

Total Control 4
  • 【発売元】
    コレコ(米国)
    Coleco
  • 【発売日】
    1981年
  • 【カートリッジ】
    4種類(1種類は本体に付属)

 1976年に世界初の電子ゲーム『オートレース』を世に送り出したマテル社は、1977年以降にスポーツを題材にしたLED電子ゲームを続々と発売した。それらが人気を博すと、ほどなくして類似商品が海外の各社からリリースされはじめる。やがて、お得感を売りにしようと、オーバーレイを付け替えることによってひとつの本体で複数のスポーツゲームを遊べる機種が多数登場した(「関連商品」のページを参照)。コレコ社が発売した『トータルコントロール4』もそうした方向性のゲーム機のひとつだが、この商品には他社とは一線を画すアイデアがいくつか盛り込まれている。

 まず注目したいのが、他社製品が本体と複数のオーバーレイをひとつのパッケージに収めていたのに対し、『トータルコントロール4』はオーバーレイをカートリッジという形にして、別売りで販売する戦略をとった点。カートリッジ化しなくても同じ商品を作れていたはずなのだが(後述)、『トータルコントロール4』はカートリッジ交換式携帯ゲーム機の装いをまとうことで、他社の同種の電子ゲームとの差別化を狙った。

 もうひとつ特徴的なのが、最大4人でのプレイを実現した点。『トータルコントロール4』の『4』は、4つのゲームが遊べるのに加えて、4人プレイができることも意味している。本体には4本のスティックが付いており、本体付属の『フットボール・カートリッジ』では、4人がそれぞれ異なる役割を担当する。各役割をCPUに任せられるので、1~3人でのプレイも可能だ。さらに、大ヒットしたマテル社の『フットボール』よりもアメフトをリアルに再現すべく、フォーメーションの設定や各種のラン&パスプレーといった少々マニアック要素も導入。ただし、20ページ超のプレイブックを読まないと理解しにくい部分もあり、コアなアメフトファン以外の人にとって、遊び込むためのハードルはやや高めとなっている。

 一方で、『バスケットボール』『ホッケー』『サッカー』の3種類がセットで発売された別売りカートリッジの内容は、4人プレイが可能なことをのぞけばどれもマテル社の同名LEDスポーツゲームと似通ったものだった。そもそもマテル社の3製品はひとつのゲームに若干の調整を加えて3つのバリエーションとして展開していたに過ぎず、『トータルコントロール4』の3種類の別売りカートリッジも同様の作りだったため、そのセットを購入したユーザーが同じようなゲームばかりで残念な気持ちに包まれたことは想像に難くない。

『トータルコントロール4』のもとになった、マテル社の4つのLEDスポーツゲーム。日本でも『ゲームシンジケートシリーズ』としてマテル・ジャパン社から発売された(写真は日本版)。なお、『バスケットボール』『サッカー』『ホッケー』は、制限時間が異なる以外はほぼ共通のゲーム内容。

余談だが、『ゲームシンジケートシリーズ』は全7種類。ひとつ前の写真の4機種に加えて、『オートレース』『スペースアラート』『ベースボール』でシリーズが構成されていた。

カートリッジを外した状態の『トータルコントロール4』本体。手前側の側面に端子の挿入口があり、表示部にはそれぞれのカートリッジがオーバーレイのように重なる構造となっている。

カートリッジを裏側から見たところ。本体にセットするための独特の形状のプラスチックに、接続端子とオーバーレイ部分が組み込まれている。

HOMEサイドの右側のスティックを特定の方向に倒しながら電源を入れることで、プレイヤーの人数とスキルレベルを設定可能。

フットボール・カートリッジ』のプレイ画面。明るく光っているのが攻撃側で、操作できるユニットは点滅して表示される。

パッケージの裏面に、1~4人それぞれでプレイする写真を掲載。4人までなら何人でも遊べることをアピールしている。

説明書の下部の文章を訳すと「本物のスポーツと同じように、トータルコントロール4を習得するには練習とスキルが必要です。“プロ”になるには、説明書とプレイブックをよく読んでスキルレベル1の簡単なプレイから始めてください」。この文からも、ゲームの難度が高いことが伝わってくる。

【CGWM TRIVIA】
カートリッジ内に入っているものは……

 全種類の対応カートリッジを分解し、中から出てきたものを並べたのが下の写真。それぞれのカートリッジ内には、約3センチ四方の端子付きボードが収納されているのみだった。

 4枚のボードを見比べると、最上部の端子と結ばれた端子がボードごとに異なるのがわかる。すなわち、同じコレコ社の『クイズ・ウィズ』と同様に、『トータルコントロール4』のカートリッジもプログラムを供給しているわけではなく、本体内の電流の経路を切り替えているに過ぎない。わざわざカートリッジ化しなくても、他のオーバーレイ交換式のLEDスポーツゲーム機のように本体のスイッチで十分対応できたはずだが、商品の差別化を図るため、あるいは売上金額を伸ばすため、あえてカートリッジにしたということなのだろう。

左上が『フットボール・カートリッジ』、右上が『バスケットボール・カートリッジ』、左下が『サッカー・カートリッジ』、右下が『ホッケー・カートリッジ』(これのみボードのバージョンが異なる)の中身。最上段の端子の接続先が上から2~5番目の端子のどれなのかによって、本体のゲーム内容が切り替わる仕組みだ。

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