ゲームシンジケート・シリーズ
Game Syndicate Series基本解説 | シリーズ商品 |
Mattel
1976年に世界初の携帯型電子ゲーム機と言われる『オートレース』を発売した米国マテル社は、電子ゲーム機というジャンルの礎を築いたメーカー。1979年、その日本法人であるマテルジャパンは、マテル社の初期7機種に「ゲームシンジケート」というシリーズ名を付けて日本国内での販売を開始した。シリーズ内の『オートレース』と『スペースアラート』(リニューアル前の名称は『ミサイルアタック』)は1977年にバンダイが輸入販売をしていたが、マテルブランドの商品として再リリースした形だ。
ゲームシンジケート・シリーズは、海外版のパッケージに日本語表記のメタリックなシールを貼り付け、日本語マニュアルをセットにした製品。米国で100万台以上売れたと言われる『フットボール』を含む期待できるラインナップではあったものの、皮肉なことに日本のマーケットでライバルとなったのは、マテル社の製品を研究して作られたバンダイのLSIポータブルゲーム・シリーズだった。ゲームシンジケート・シリーズの発表記者会見が開かれたのは1979年5月16日のことだが、そのわずか1ヵ月ほど前にLSIポータブルゲーム・シリーズの新作『チャンピオンレーサー』などが発売されていたのは、マテルジャパンにとって不運なタイミングだったと言えるだろう。いかにゲームシンジケート・シリーズが米国で人気を集めたゲーム機であっても、1~3年前の製品であることは否めず、進化を続ける電子ゲーム機の最新作と競合するのは望ましい状況ではない。また、価格帯にも差があり、基本価格4,500円(『ベースボール』のみ6,200円)のLSIポータブルゲーム・シリーズが新製品の『チャンピオンレーサー』で3,980円という低価格化に挑んでいたのに対して、ゲームシンジケート・シリーズは最安値の『オートレース』『スペースアラート』でも4,980円で、それ以外の5機種は6,800~7,800円と高価な印象はぬぐえなかった。
結果的に、1979年内に『チャンピオンレーサー』『LSIベースボール』『ミサイルインベーダー』というヒット商品を連発したLSIポータブルゲーム・シリーズを前にして、ゲームシンジケート・シリーズは1977~78年の米国での売れ行きを日本国内で再現することはできなかった。ただし、やがて隆盛を迎える電子ゲーム機というジャンルの第一歩を日本に持ち込んだこのシリーズが、ゲーム史的には意義のあるものだったことは間違いない。
ゲームシンジケート・シリーズの『オートレース』(左)と、LSIポータブルゲーム・シリーズの『チャンピオンレーサー』(右)。ゲームシンジケート・シリーズの本体のほうがひとまわり小さい。
ゲームシンジケート・シリーズのパッケージに斜めに貼られているシール。「超小型! プロ用高級メカ!」というキャッチコピーは、サイズが少し大きくて価格が安いLSIポータブルゲーム・シリーズとの差別化を図ったものだったのかもしれない。
シールは手貼りだったようで、貼られている位置や角度は完全に同じではない。なかには、写真の右側のように水平に貼られてしまったパッケージも。
取扱説明書は、日本語版だけでなくオリジナルの英語版のものも付属している。
封入されているチラシは、ゲームシンジケート・シリーズ7機種をまとめたもの。各機種の本体の脇には、赤い文字で以下の写真のようなテキストが添えられている。
『フットボール』のテキスト。国内にアメフトのルールを知らない人が多い状況を踏まえて、「ルールを知らなくてもよい」とは思い切った書きっぷり。
『ベースボール』のテキスト。米国では比較広告が珍しくないとはいえ、ライバル商品を「ジャリ用ベースボール」と呼ぶのは、この時代ならでは?
1979年5月16日にマテルジャパン本社で開かれた記者会見では、国内で発売予定の15機種のタイトルが発表された。それらのうち6月発売予定の『オートレース』までの7機種はゲームシンジケート・シリーズとして実際にリリースされたが、下記の8機種は国内での発売が確認されていない。ゲームシンジケート・シリーズ7機種のセールスが想定どおりにいかず、以降の製品の投入を断念したということなのだろう。なお、8月発売予定の『メロディーデンタクくん』『マジックオルガン』『セサミストリート算数電光黒板』は、ゲームシンジケート・シリーズ7機種と並んだ写真が当時の雑誌に掲載されていた。
【1979年7月発売予定】
・メロディマジック(予価3,980円)
【1979年8月発売予定】
・メロディーデンタクくん(予価6,800円)
・マジックオルガン(予価6,800円)
・セサミストリート算数電光黒板(予価9,800円)
【1979年9月発売予定】
・フットボールⅡ(予価8,300円)
・ブレインバフラー(予価12,000円)
・ホロスコープ(予価16,000円)
・ビージーズ・リズムマシン(予価9,800円)
9月発売予定だった4機種は、米国ではリリースされている。写真は『ビージーズ・リズムマシン』以外の3機種。『ビージーズ・リズムマシン』はゲーム機ではなく、リズム機能が付いた電子キーボードのようなもの。