カジノ21

Casino 21
基本解説
  • 【発売元】
    エポック社
    Epoch
  • 【発売日】
    1978年8月頃
  • 【価格】
    7,800円

 日本国内で最初に発売されたゲーム電卓。10ケタまでの計算機として使えるだけでなく、カードゲームのブラックジャックが遊べるようになっている。

 ディスプレイの左端にディーラーの数字、右端にプレイヤーの数字が表示される点や、インシュランスをはじめとした特殊ルールに対応している点など、『カジノ21』には東芝製ゲーム電卓『BC-1010BJ』と共通する部分が多い。それもそのはず、『カジノ21』と『BC-1010BJ』はCPUとしてNEC製の同じLSIを使用しており、ゲームの仕様ばかりか操作への反応や各種の表示タイミングまで一致しているのだ。このように「名前や外見が異なる機種でゲーム内容は同じ」という事例は、黎明期の電子ゲーム機や据え置きゲーム機の世界では決して珍しいことではない。

 ブラックジャックという遊びが強い吸引力を持っているわけではない日本においては、『カジノ21』はゲーム電卓と銘打って新規性をアピールしてもさほど注目を集めるには至らなかった。ゲーム電卓というジャンルが花開くのは、2年後にカシオから『MG-880』(デジタルインベーダー)が登場したときのことになる。

パッケージ右上の文中に「ゲーム電卓」という単語がお目見え。

説明書には「日本で初めてのゲーム電卓」と明記されている。

左側がディーラーの数字、右側がプレイヤーの数字。「F」は絵札を表す。

『カジノ21』の横に並べた東芝製『BC-1010BJ』。外見の異なる2台だが、電卓としての機能やゲーム内容はまったく同じだ。

『BC-1010BJ』とは配置こそ異なるものの、『カジノ21』にも同じ機能を持つボタンがひととおり用意されている。

説明書のほかに、遊びかたをコンパクトに解説したカードも付属。

ブラックジャックに関する豆知識が「小話」として説明書の数ヵ所に掲載されている。

『カジノ21』は米国でも発売された。パッケージや説明書が独自のものになっている米国版『カジノ21』だが、ゲーム機本体は日本版と同じものを使用している。

【CGWM TRIVIA】
エポック社とNECが共同開発したLSI

 エポック社は家庭用ゲームの黎明期にいくつものゲーム機を発売しているが、『システム10』(1977年)、『テレビ野球ゲーム』(1978年)、『テレビベーダー』(1980年)、『カセットビジョン』(1981年)、『スーパーカセットビジョン』(1984年)、『ゲームポケコン』(1984年)といった機種はいずれもNEC(日本電気)の協力を得て開発されており、CPUがNEC製という共通点を持つ。『カジノ21』もその流れの中にある製品のひとつで、説明書には「世界最高の電子技術を持つNECとエポック社が共同開発した高性能LSIを使用」と書かれている。

 ただし興味深いのは、同じLSIを使った東芝製『BC-1010BJ』が『カジノ21』よりも先にリリースされていたと思われる点。『カジノ21』はLSIが完成していても、何らかの事情で商品化に時間を要したのだろうか。あるいは、当初は『BC-1010BJ』用として開発されたLSIが、あとから『カジノ21』にも使用されたという可能性も否定できない。

説明書に記載されている文章の一部。NECとエポック社の協力関係を感じさせる。

本体裏側に刻まれた「(C)1978」の表記。ちなみに『カジノ21』は、1978年の夏期合同見本市に展示され、同年夏から広告展開が開始されている。

『カジノ21』の内部基板。表示部は12ケタ用意されているが、計算できるのは10ケタまで。

LSIはNEC製の「D1021C」。右側に記された「K83046」は、一説によると左から2文字目と3文字目がNEC製LSIの製造年月を示すコードだという。それが正しいなら、このLSIは1978年3月製造ということになる。

こちらは『BC-1010BJ』に使用されている同じLSI。製造年月コードは「K72196」と、ひとつ前の写真の『カジノ21』のものよりも数字が若い。なお、『BC-1010BJ』用のLSIには、もっと若い「B57~」始まりの製造年月コードの存在も報告されている。

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