オートレース
Auto Race
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Mattel バービー人形などで知られる玩具メーカーのマテル社が1976年に発売した、世界初の携帯型電子ゲーム機と言われる機種。この『オートレース』と、翌年に同社がリリースしてヒット商品となった『フットボール』によって、電子ゲームというジャンルの礎が築かれた。
『オートレース』の表示部には3列の走行レーンが用意されており、上側から敵車(赤いLED)が下側に向けて移動してくる。プレイヤーは、4段階のギアでスピードを調整しながら、自車(ひときわ明るく光る赤いLED)を左右に動かし、敵車をかわしていく。衝突せずに1~数秒が経過すると自車のいる位置が一段上へと移動するので、どれだけ早く6段上まで到達できるかに挑むというのがゲームの基本ルールだ。
6段上まで計4回到達するか、カウントアップしていくタイムが99秒に達するとゲームは終了。プレイのカギを握るのはギアで、ギアを大きな数字へ切り替えるほど、自車が上の段へ上がるまでの時間は短くなるが、敵車の移動速度も上がって避けるのが難しくなってしまう。自車が最上段付近にいるときは敵車が一瞬で間近に迫ってくるため、自分の反射神経と運を信じてギアを上げたままにするか、それとも1~2速あたりで安全策をとるかといった判断が要求されることになる。世界初の携帯型電子ゲーム機というだけでなく、このような駆け引きの面白さをジャンルの初手の段階で実現していたことも、『オートレース』の特筆すべき点と言えるだろう。
なお、日本国内においては、1977年にバンダイが『オートレースゲーム』という商品名で『オートレース』の輸入販売を実施した。さらに1979年には、マテルの日本法人であるマテルジャパンがゲームシンジケート・シリーズのひとつとして『オートレース』を発売している。

2ケタの数字のタイマーと21個の赤いLED(発光ダイオード)によって表示部は構成されている。下側のひときわ明るく光るLEDが自車だ。敵車は画面内に最大2台出現する。
クルマのマークが描かれたスライド式スイッチを使い、自車を左右のレーンに移動させる。敵車にぶつかると下の段へ落とされ、そのぶんタイムをロスすることに。


1速から4速まで切り替えられるギア。ゲームのスピードだけでなく、エンジンの回転音を模した効果音もギアに応じて変化する。
マテル社の初期の電子ゲームは、9ボルト角形電池を電源に使う。


側面にはACアダプタ用の端子も用意されている。
『オートレース』の開発は、マテル社のエンジニアであるジョージ・クローゼの「携帯型電卓をゲーム機に作り替えたい」という着想から始まった。その最終版のLSIを作り上げたのは、電卓用のチップメーカーであるロックウェル・インターナショナル社のマーク・レッサー。マサチューセッツ工科大学で電気工学の学士号を取得していた彼は、電卓に使用されていた自社製LSIを改造し、わずか512バイトに収まるように『オートレース』のすべてのプログラムを設計したという。
ジョージ・クローゼが発案したと思われる表示部にも工夫が施されており、各種のLEDをプリント基板の中に組み込んだうえで、基板の手前側に暗色の透明プラスチックを設置している(下の写真を参照)。このプラスチックがスモークガラスのような役割を果たし、プレイヤーにはLEDの発光だけが見えて基板自体は視認できないようになっているのだ。

『オートレース』の内部。すっきりした構造で、左下の丸いスピーカーの下にLSIが配置されている。なお、この写真は、ACアタプタ端子が付いていない後期型のもの。

ひとつ前の写真の中央部を拡大。クルマやスコアを示すLEDは、すべてプリント基板の中に組み込まれている。暗色の透明プラスチック(写真右)を透過させることで、ゲーム機の外側からはプリント基板が見えず、光るLEDだけが視界に入るようになる。
『オートレース』の挙動を制御するLSIは、ロックウェル・インターナショナル社製のB6000。電卓用のLSIであるB5000を電子ゲーム機向けに改造したものだ。

米国版『オートレース』の取扱説明書には、少なくとも3種類のバージョンが確認されている。詳細は下の写真のとおり。いくつものバージョンが存在するということは、そのゲーム機がそれだけリピート生産されたロングセラー商品であることの証明だと言える。

説明書の右下の表記に注目。数字のうしろに何も付いていないものが初期バージョンで、(A)および(B)が付いたものはそれぞれ内容の一部が変更されている。

初期バージョンの説明書は韓国、(A)および(B)が付いた説明書は香港で印刷されたことがわかる。ちなみに本体裏の表記も、初期バージョンは「MADE IN KOREA」、(A)および(B)の時期のバージョンは「MADE IN HONG KONG」となっている。
初期バージョンの説明書における解説の冒頭部分。

(A)および(B)が付いた説明書では、ギアを1速の位置にセットしていないとゲームが始まらない、ということが強調されている。


初期バージョンおよび(A)が付いた説明書の最終ページ。ACアダプタの規格について記されている。

(B)が付いた説明書は、ACアダプタ端子が削除された後期型の本体に付属。そのため、最終ページからACアダプタに関する説明がカットされている。
参考までにヨーロッパ版の説明書も載せておく。英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語が並記されているほか、表紙の右下の数字が「9879-0620」になっている(米国版は「9879-0920」)。

『オートレース』でプレイヤーが目指すのは、できるだけ短い時間で4周すること。その目安となるように、説明書にはゲーム終了時のタイム別の評価が以下のように記載されている(【 】内は日本で発売されたゲームシンジケート版の説明書における表記)。つねに4速で走るプレイに慣れてくれば、30秒以下でクリアすることは十分可能だ。
・30秒以下 World Champion Driver【スゴイ! キミは世界チャンピオン!】
・30~45秒 Professional Driver【プロのA級ライセンスが持てるよ】
・45~55秒 Showing Potential【有望! 4速を使いこなして壁をやぶろう】
・55~65秒 Still an Amateur【まだまだアマチュア。2速、3速をうまく使えば上達するヨ!】
・65~75秒 Stick To The Highways【ご用心、高速道路で立往生!】
・75秒以上 Leave Car In Garage【ア~ア~、車をガレージにしまいなさい。】

イラスト入りで遊びかたが解説されている説明書。右下の枠内に、タイム別の評価が書かれている。