フットボール
Football基本解説 |
Mattel
『オートレース』の翌年に登場した、マテル社のLED電子ゲーム機第2弾。米国で人気のアメリカンフットボールを電子ゲーム化し、1977年の米国玩具市場で大きな成功を収めた。販売台数に関する公式の資料は確認できていないが、100万台以上のセールスを記録したとも言われている。
画面には全長100ヤードのフィールドのうちの9ヤード分の範囲が表示され、ゲームは自陣の20ヤードの地点からスタートする。行く手を阻んでくるのは、5人の相手タックラー。プレイヤーに与えられた攻撃権は4回で、4回の攻撃の間に合計10ヤード以上前進すると、その時点で新たに4回の攻撃権が与えられる。攻撃権を維持しながらトータルで80ヤード先に到達できればタッチダウンというルールは、実際のアメフトをベースにしたものだ。
27個の赤いLEDと数字の表示を使うことでアメフトを電子ゲームの枠組みに落とし込んだのは、当時としては画期的なことだった。それを裏付けるように、マテル以外の各社から模倣品や派生品が続々と発売され、その数は確認できているだけでも30機種以上に及ぶ。結果的にマテル社製『フットボール』は、自身がヒットしたことと他社の参入を促したことにより、電子ゲーム機という生まれたてのジャンルを世に広めるのに大きく貢献したのだった。
なお、日本国内で発売された『フットボール』については、別のページで解説する予定。
ひときわ明るく光るLEDがプレイヤーで、残りの5つのLEDは相手タックラー。画面に表示されている範囲はフィールド全体の11分の1くらいなので、タッチダウンするには端から端まで何度も移動する必要がある。
ゲーム開始直後は上か下へ移動するのが定石。写真のように逆サイドに空きができたら、一気に走り抜けるチャンスだ。
4回の攻撃権を使い切るかタッチダウンを決めると、逆向きに攻め込む2P側のターンに移行。なお、コンピュータは2P側を操作してくれないので、ひとりで遊んでいるときは1P側と2P側を交互に受け持つことになる。
「ST」は試合の状況を(次の写真を参照)、「SC」は両チームの得点と残り時間を表示するボタン。「K」はキックボタンで、4回目の攻撃時にのみ使用できる。相手タックラーをかわせそうにないときは、キックを使ってフィールドゴールを狙う手も。
「ST」を押したときの表示の例。左の「2」は2回目の攻撃であることを、中央の「33 ┤」はフィールドの左半分の33ヤード地点が現在位置であることを、右の「8」はあと8ヤード進めば新たに4回の攻撃権が得られることを示す。
『フットボール』などのマテル社の初期LEDゲームは、2000年代に入ると米国で何度か復刻版が発売された。かつてそれだけ人気の高い電子ゲーム機だったことの証明と言えるだろう。写真は、オリジナル版の横に並べたキーチェーン版『フットボール』。
この機種には『FOOTBALL』という名前のものと『FOOTBALL Ⅰ』という名前のものが存在する。おそらく初期段階の名前は『FOOTBALL』で、新機種『FOOTBALL Ⅱ』の発売時に『FOOTBALL Ⅰ』へ改名して区別しやすくしたと推測される。
『FOOTBALL』と『FOOTBALL Ⅰ』では、本体に貼られたロゴがこのように異なる。
『オートレース』『フットボール』『ベースボール』『バスケットボール』『ホッケー』『サッカー』というマテル社の初期LEDゲームはすべて、パッケージに大小2種類のバージョンがある。ここでは各バージョンを大箱版と小箱版と呼ぶが、どのゲームも最初に大箱版が発売され、しばらく経ってから小箱版が登場した。
なお、『フットボール』の大箱版には『FOOTBALL』表記のものと『FOOTBALL Ⅰ』表記のものがあるのに対して、後発の小箱版は『FOOTBALL』表記のものしか存在が確認されていない。これは、小箱版『FOOTBALL』の発売時期に、続編の『FOOTBALL Ⅱ』が『FOOTBALL 2』へ表記変更されたのに合わせて、一度は『FOOTBALL Ⅰ』に改名されていた第1弾も『FOOTBALL』へ表記が戻されたからだと思われる。
大箱版は、箱の横にフラップ(袖のような部分)が付いている構造。マテル社の初期の電子ゲーム機を象徴するパッケージだ。ただし、『オートレース』の大箱版だけはフラップが付いていない。
大箱版では、本体が発泡スチロールのケースに収納されている。
小箱版は、ロゴの位置が上部へ移動し、本体のイラストが傾いているデザインに変更された。『フットボール』の小箱版の裏面には、大箱版にはなかった特許の登録番号が記載されている。
小箱版では、本体は気泡緩衝材(いわゆるプチプチ)に包まれた状態で箱の中に入っている。
大箱版と小箱版の上面のサイズ比較。小箱版は発泡スチロールのケースを使わないようにしたことで、かなりのサイズダウンが実現された。