ザ・カリキュレーターゲーム

The Calculator Game
基本解説
関連商品
  • 【発売元】
    ITE(米国)
  • 【発売日】
    1976年

 ゲーム電卓というと、カシオから1980年に発売された『MG-880』(デジタルインベーダー)が代表的な機種だが、電卓とゲームを結びつける商品はそれより前から存在していた。世界初の携帯型電子ゲーム機『オートレース』がリリースされた1976年には、通常の電卓でゲームを遊ばせるタイプの商品が米国で複数登場している。そのひとつが、ITE社から発売された『ザ・カリキュレーターゲーム』だ(同年発売の他の商品については「関連商品」のページを参照)。

 『ザ・カリキュレーターゲーム』は、「Corvus 804」という電卓と約80ページの冊子をセットにした商品。「Corvus 804」はふつうの電卓に過ぎず、いわゆるゲーム的な機能は搭載されていない。カギを握るのは冊子のほうで、通常の電卓を使って『ブラックジャック』をはじめとする24種類のゲームを遊ぶための方法がぎっしりと掲載されている。それらのゲームは、インディアナ大学で定期開催されるゲームナイトセッションにおいて、繰り返し遊んでは調整されたものだという。携帯型電子ゲーム機がまだ一般的ではなかった時代に、電卓というデジタルガジェットを使って新しい遊びをどれだけ創造できるか、その挑戦の成果物のひとつが『ザ・カリキュレーターゲーム』だといった捉えかたもできるだろう。ちなみに同時期には、似たコンセプトの書籍が何冊か出版されている。

 翌1977年になると、電卓自体に『ブラックジャック』や『ルナランダー』などのゲーム機能を搭載した機種が各社から姿を見せはじめる。そしてその系譜は、『MG-880』からスタートするカシオの『ゲーム電卓』シリーズへとつながっていくのだった。

電卓の「Corvus 804」と取扱説明書。電卓本体のサイズは、おおよそ縦13センチ×横7.5センチ。

8ケタ表示のディスプレイを備えた「Corvus 804」は、きわめてふつうの電卓だ。

同梱されている約80ページの冊子「THE CALCULATOR GAME」は、「GAME WITH THE POCKET CALCULATOR」という書名で単体販売もされていた。

『ザ・カリキュレーターゲーム』のパッケージは、縦26センチ×横40センチ程度と大きめのサイズ。

外側のケースを外すと、中からほぼ同じサイズの箱が現れる。左右の破線部を取りのぞけば、右側の開口部からは電卓、左側の開口部からは冊子が覗き見えるようになり、その状態のまま店頭での商品展示に利用可能。

箱の中では、電卓と冊子がこのような位置に固定されている。

【CGWM TRIVIA】
ふつうの電卓で『ブラックジャック』を遊ぶ方法

 通常の機能しか持たない電卓を使ってどのようにゲームを遊ぶのか、疑問に感じた方もいることと思う。一例として、『ザ・カリキュレーターゲーム』における『ブラックジャック』の遊びかたの手順を紹介しよう。

プレイヤーの人数は3~4人。そのうちのひとりが、ゲームに参加しないディーラーとなる。ここでは、ディーラー以外のプレイヤーを3人として、仮にA氏、B氏、C氏と名付ける。
ディーラーはA氏に、電卓に50未満の2ケタの数字(例:32)を入力してもらう。
ディーラーは割り算の記号を押したあと、ディスプレイを手で覆い、B氏に50を超える2ケタの数字(例:71)を入力してもらう。
ディーラーは「=」を押して画面の数字を確認する(例:0.4507042)。
ディーラーは画面の小数点以下の数字の左から2つずつを、メモに書くなどして3人に渡す(例:A氏には「4、5」、B氏には「10(0は10になる)、7」、C氏には「10、4」。
ディーラーはディスプレイに表示されている数列に、その中で最大の数字を掛けて、新しい数列を作る(例:0.4507042×7=3.1549295)。
3人のプレイヤーが追加の数字を要求するたびに、ディーラーは新しい数列の左側から順に数字を伝える(例:A氏の1回目の要求には「3」、2回目の要求には「1」、3回目の要求には「5」、B氏の1回目の要求には「4」、C氏の1回目の要求には「9」)。
3人のプレイヤーの数字の要求が終わった時点で、各プレイヤーの数字の合計を公開して勝敗を決める(例:A氏は18、B氏は21、C氏は23なので、一般的なブラックジャックのルールに準じてB氏の勝利となり、B氏は次のディーラーになる)

 といったように、手順は決してシンプルではなく、本物のトランプを使ったほうが明らかに遊びやすい印象を受ける。しかしながらデジタルガジェットの黎明期においては、たとえ手順がまわりくどくても、電卓でトランプをシミュレートする体験に価値を見出せたということなのだろう。

『ブラックジャック』の遊びかたの解説ページの冒頭部分。『ポーカー』のシミュレーションにも挑戦中と書かれている。

冊子に掲載されている24種類の電卓ゲーム。これだけの遊びのバリエーションを考えるのは容易ではなかったに違いない。

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