ゲームポケコン

Game Pocket Computer
基本解説
カートリッジ
  • 【発売元】
    エポック社
    Epoch
  • 【発売日】
    1984年9月
  • 【価格】
    12,800円
  • 【カートリッジ】
    5種類

 本格的なカートリッジ交換式携帯ゲーム機としては日本初の製品。本体内にCPU、カートリッジ内にプログラムを搭載するという仕様を、『ゲームボーイ』の約4年半前に実現している。また、日本初の家庭用ゲーム機『テレビテニス』以来、テレビに接続する複数のゲーム機を手がけてきたエポック社が、カートリッジ交換式としてヒットした『カセットビジョン』(1981年発売)の成功体験を携帯ゲーム機のジャンルに持ち込もうとした商品と捉えることもできる。

 ポケコンという名称からは、1980年代にシャープやカシオなどが発売した携帯型の『ポケットコンピュータ』を連想させるが、『ゲームポケコン』はゲームで遊ぶことに特化したハード。別売りのゲームカートリッジや、本体内蔵の『パズルゲーム』『グラフィック機能(という名称のグラフィックツール)』を楽しむために作られており、『ポケットコンピュータ』のようにプログラムを作成することはできない。

 表示部分には、75×64ドットのドットマトリクス方式のモノクロ液晶を採用。『ゲーム&ウオッチ』をはじめとする液晶ゲームは事前に用意したアニメパターンを点灯させることで画面を構成していたのに対し、『ゲームポケコン』ではドットを利用してソフトごとに異なるグラフィックを映し出せる。

 4本のローンチタイトルとともにリリースされた『ゲームポケコン』は、1984年の年末商戦においてエポック社が注力する商品のひとつに位置付けられていた。しかし、「魅力の新製品カセット・続々登場予定!!」と告知されていた対応ソフトが1985年以降は1本しか発売されなかった事実からは、1984年末商戦の結果が芳しくなかったことが伺える。折しも1984年下期は、ハドソンとナムコの参入で『ファミリーコンピュータ』の人気に火が付き始めており、さらに翌年にはファミコン史上に残る傑作『スーパーマリオブラザーズ』も登場。カートリッジ交換式携帯ゲーム機という『ゲームポケコン』のコンセプトが目新しさを感じさせたとしても、フルカラーの面白いゲームを連発し始めていたファミコンにはソフトの内容でもタイトル数でも太刀打ちできず、エポック社が早々にソフト開発の継続を断念したのも無理のないことだった。

本体の左下部分。8方向キーの上側に、電源スイッチとサウンドのON・OFFスイッチが設置されている。ボリューム調整ができないのは、『ゲームウオッチ』をはじめとする当時の電子ゲームと同じ。

本体の右下部分。スタートボタンとセレクトボタンの下側に位置するのは、当時の携帯ゲーム機としては数が多い4つのボタン。『ポケコンマージャン』や『ポケコンリバーシ』では、すべてのボタンに個別の役割が与えられている。

カートリッジをセットせずに電源を入れると、うずまき模様が描かれていくのに合わせて、画面上部に「LCD DOT MATRIX SYSTEM FULL GRAPHIC(75*64 DOTS)」の文字が流れる。本体の左上にも似たようなことが書かれており、ドットマトリクス方式であることを強くアピール。

各カートリッジには、ゲームのタイトルと一緒に操作方法が書かれている。これを本体にセットしてみると……。

透明窓からゲーム名と操作方法が見えるのは巧みなアイデア。同じエポック社の『カセットビジョン』や『スーパーカセットビジョン』でもカートリッジに操作方法が記されており、なるべくマニュアルを見なくても遊べるようにという同社の配慮が感じられる。

最初から本体にセットされているのは、「本体内蔵機能『パズルゲーム』『グラフィック機能』」と書かれたカートリッジ。ただし、これは本体の端子部を保護するためのもので、セットしていなくても上記の機能は利用できる。

本体内蔵機能の『パズルゲーム』と『グラフィック機能』の画面イメージ。『パズルゲーム』はマスの少ない「15パズル」で、『グラフィック機能』は簡易なお絵かきツール(セーブ不可)だ。

ゲーム“ポケコン”と名乗っているが、ほぼA5サイズ(約21.5×14.5センチ)で、ポケットには収まらない。『ゲームポケコン』にかぎらず、黎明期のカートリッジ交換式携帯ゲーム機にはサイズの大きなものが多かった。写真は、初代『ゲームボーイ』の脇に『マイクロビジョン』と『ゲームポケコン』を並べてみたところ。

電源となるのは単3電池4本。あるいは、エポック社のLSIゲーム『デジコム』シリーズ用のACアダプターも使用可能。

キリトリ線でアンケートハガキと連なる紙の両面に、「第1期発売カセット」として『倉庫番』以外の4タイトルが紹介されている。

外箱の右上部分には、「次はどのゲーム?」という文字とともに、4本の初期タイトルのアイコンが並ぶ。左から順に『ブロックメイズ』『ポケコンマージャン』『アストロボンバー』『ポケコンリバーシ』のアイコンだ。

【CGWM TRIVIA】
『ゲームポケコン』が発売されたのは1984年? 1985年?

 この原稿を公開した2024年7月17日時点において、古いゲーム機を紹介している書籍やWebサイトの大半では、『ゲームポケコン』は「発売:1985年、価格:12,000円」と記述されている。しかしながら、手元にある現物には「(C)1984」と刻まれており、外箱には「12,800円」の値札が。ちなみに、当時の雑誌やチラシなどを調べてみると、後者の「発売:1984年、価格:12,800円」が正しいように思える。念のためエポック社に問い合わせてみたところ、「発売:1984年9月、価格:12,800円」との回答が得られた。おそらく、どこかに「発売:1985年、価格:12,000円」と誤った情報が掲載され、以降の書籍やWebサイトはそれを転載していったことで、正しくないデータが世の中に拡散してしまったのだろう。

 資料が少ない古いゲーム機の記事を作るときには、こうしたミスは起こりがちだ。当ミュージアムでは、できるかぎり大元に近い情報を確認するよう心がけているつもりだが、気づいていない情報ソースが存在する可能性はある。もしも掲載内容について誤り等を見つけた場合は、ぜひCONTACTページからご指摘いただきたい。

本体裏に刻まれた「(C)1984」の文字。月刊『トイジャーナル』1984年11月号と12月号の広告では、『ゲームポケコン』が年末市場向けの商品で、価格は12,800円と紹介されている。さらに「各社TVCF情報」のページでは、同年11月と12月に日本全国でテレビCMが流れたことを確認可能。

TOP